2012年9月20日木曜日

保養プロジェクトに参加して


参加してくださったY.Tさんのレポートです。


2012年9月20日

ルンアルン学園での保養プロジェクトに参加して
Y. T

1.概要
【1】日時:2012821日(火)~31日(金)
【2】場所:タイ バンコク ルン アルン学園
【3】参加者:Y.TAge40、Female) 、
Y.YAge9、Male)、Y.YAge7、Male)、Y.MAge4、Female
【4】参加した目的:
この学校の素晴らしい自然溢れる環境での学びと生活により、震災、原発事故による心身への影響を緩和させ、健やかな気持ちになることにより、心身の健康を取り戻したい。
また、教育手法の違いを体感し、世界は広く、様々な人々や習慣など違いがあることを体験を持って知り、視野を広げたい。
【5】スケジュール: 
821日(火)到着
822日(水)校内見学、ステイ先へ移動
823日(木)~30日(木)学校登校
25,26日は学校は休み)
831日(金)帰国
2.内容
【1】バンコクと日本との違い
①子どもに優しい
 街を歩いていても、子どもに向ける大人の視線、空気が優しい。
 電車の中でも、サッと席を譲ってくれる。
 校内でも自然に挨拶をしてくれるのでとても居心地が良い。
 日本では、道で会って知らない人に挨拶するとびっくりされるが、バンコクでは会釈してくれる。
  
②話し声が小さい
 会話する声の音量が小さく、聴いている方も耳に優しい。
 日本でいかに大きな声でしゃべっているのか、と思った。
 もしかしたらそんな大きな声で会話する必要はないのかもしれない、と思った。

③怒っている様子がほとんどない
 街中、家庭内、学校内で子どもを叱る、厳しく注意するという姿を見なかった。
 躾をどのようにしているのか、とても感心がある。
 
④体格がよい
 自分が勝手に持っていたイメージだとタイの人は女性も男性も華奢なイメージがあったが、 児童、生徒たちは身長も高く、体格の良い人が多かった。

【2】日本の公立校との違い
①毎朝、集会がある
  毎朝、何らかの形で身体を動かす時間があるのはいいと思う。
  主に運動系の集会だったが、サーキットトレーニング形式で、全体のバランスを整える働きも生まれるのではないだろうか。
  また、身体を動かしてから、机上の勉強を始めるのは、気分転換にもなり、授業への集中も促すのではないだろうか。
  異学年グループでの活動もあり、交流があってよいのではないか。
  
②机の形
  最初に気が付き、一番驚いた点である。
  四角ではなく台形の机がいかに想像力を呼ぶかを感じることができた。
  四角の机は学校側が生徒を管理するのには向いているが、「完全」であることは、想像力を生み出さないのかもしれない。
  台形という「不完全」な形だからこそ、創意工夫が生まれるのかもしれない、と感じた。

③ノートが統一
  ノートが統一されたシンプルなものであること。
  これにはどんな意味があるのだろうか?
  イイムラ先生からの説明では、ノートも回収して、評価のポイントとなるとのこと。
  確かに、中学生の授業のノートの取り方を見ていたら、先生が書いたマッピングをそのまま写している学生もいれば、それをライン上に落としていっている生徒もいた。
  「ノートの書き方」として、1つのスタイルを生徒に強制させるのではなく、ノートの取り方も含めて、生徒を観察しているというのはとても面白いと思った。
  日本の公立校では、ノートの書き方から教えており、基本は板書をそのまま写す形なので、クラス全員、ノートの取り方は一緒である。
  この方法は、基礎をまず押さえてから、応用へということだとも考えられるが、授業が、黒板に書いたことをそのまま写す、という作業に没頭する時間になり易いのではないか、とデメリット部分が浮かんだ。
  
④食事の重要性
  ルンアルンでは、10時のおやつ、ランチが重要視されていると感じた。
  10時に軽食を取ることによって、午前中の教科学習にメリハリがつき、リフレッシュし、授業へ集中できるのではないか。
  また、ランチについては、幼稚園の頃から食事を作る、ということに定期的に関わり始め、中学、高校になってからは交代で、メニューの立案から作成まで、学年全体のランチを担当するという仕事があり、これによって、仲間との協調作業、工夫など大きな学びが隠れているのではないか、と思った。
  日本においても「食育」という言葉があるが、「食育」はどちらかと言うと、「栄養のバランスを取る」や「お手伝いをする」など、1つの答えとある一定の価値観が準備されており、比較して考察すると0からのスタートではないと考えられる。メニューから作り方、時間配分など、スキームとして将来社会に出てから役立つ力をここから学べるのではないか、と思った。
  
⑤食器を自分で洗う
  日本では、衛生面の観点から給食で使った食器を各自が洗う、という習慣は集団生活においてはない。自分のことは自分で最後まで片付ける、というのはホリスティック教育の一部なのか、と思った。

⑥1クラスに教員が2人いる
  小学校において、生徒数25人に対して教師が2人がいるというのは、個人の授業中の様子や個人の能力に目が届く人数と考える。

⑦毎日のスケジュールがカチッと決まっていない
   基本の時間割はあるが、生徒やクラス、教科の特性によって伸縮自在になっているように感じた。そこからは機械的にはめるのではなく、目的に合わせて制度を考えるという自由自在なスタイルを取っていると感じた。

⑧校内のいろいろな所に自然に集えるスペースがある
 バンコクの気候を利用して、校内に多くの植物が植えられており、そこに学年や教員、生徒、父母などの立場を超えたステークフォルダーが自由に対話できる場所が用意されており、そこで新しいアイディアや意見などが交換される可能性を秘めているのではないか。
無印良品などのデザインで知られる原研哉氏の著書『日本のデザイン―美意識がつくる未来』の中に出てくる「ボタニカルワークスフィア」構想というものが出てくる。これは、リゾートとワークスペースをひとつの場所に作り、onとoffを自由に行き来する、というこれからの生活のスタイルのひとつの提案なのだが、ルンアルンの校内を歩きながら、まさにその構想が実現されたかのような感じを受けた。

⑨放課後、売店が出る
 これは、子どもたちにとっても放課後を楽しみに過ごせる時間になった。
 日本では、放課後に買い食いして帰ることは、絶対にいけないこととされている。
 全く、考え方が違うことに驚いた。
 
⑩ゴミの分別
 ゴミのリサイクルと分別が徹底して行われていること。
 ホリスティック教育に基づいているからこそ、余計説得力があると感じた。これを家庭でも実践していけば、ゴミの削減につながるのではないか。

⑪先生の板書にマッピング(マインドマップ)が使われている 
 個人的に使っているマインドマップを実に自然に先生方が使っていることに感銘を受けた。
 飯村さんに聞くところによると、授業計画策定、授業研究などもマッピングの手法を用いながら行っているとのことで、ホリスティックとマッピングが親和性が高い、ということ知ることができた。
3.気付き
①ホリスティック教育の重要性
 「ホリスティック教育」というオルタナティブ教育に出会ったことは、今まで初等教育は「義務教育」だから、と全く何も考えずに学校に行かせることを選択していたが、それはある意味育児放棄に近いのでは?と内省する大きなターニングポイントとなった。
 赤ちゃんの時から自然と備わっている「好奇心」を「学び」に結びつけ、「知識」に落とし込むという、人類が持っている自然の流れに基づいているこの教育手法は初等教育にこそ、伸ばさなくてはいけない力だと思った。
 
②評価のポイント(全体の中での位置、個の発展度)
 日本の学校では、評価は定められた指標に対する到達度でしか評価されていないように感じるが、ルンアルンでは、個人の伸び具合もしっかりと評価しているとのことで、多面的な評価の必要性に気付けた。

③個の存在、まるごと肯定する
 2.とも関連するが「ホリスティック」というだけに個人をまるごと肯定する姿に感銘を受けた。
 学校でも家庭でも「行為をする」=「DO」によって評価されることに行き詰まっている子どもが多くいるのではないか?と最近思うのだが、そうではなく、子どもたちの存在そのもの=「be」が全面的に肯定される社会の中で成長することは、自己肯定感と自尊心という一人一人のベースを作る大きな源になっているはずである。

④自分から動くことを信じる
 授業の様子を見て、「これをしなさい。」というのではなく、あくまでも生徒本人が自らの意思で動くことを最後まで信じているのだな、と感じた。

⑤どんな結果からも導かれる
 物理の授業を参加した際、予定では開いているはずの門が開いていなくて、想定していない授業展開になっても、それを利用して授業を展開していくことがすごいと思った。まさにこの世の中に不要なものはなく、全てが必要な存在である、という「ホリスティック」的価値観が自然に根付いていることのすごさにびっくりした。

4.私たちの変化
①子どもたち
帰国後、明らかに自分で考えた発言、行動が見られるようになったのは驚きだ。
そして、バンコクでの日々を時折、思い出して、「また、行きたいね。」と会話に出るので、子どもたちにとっては印象深い出来事になったに違いない。

②私
親である私にとっては、言わずもがな、子どもの教育を考える大きなターニングポイントとなった。
「子どもは日々成長していくので待ってくれない。」という言葉にハッとさせられ、今、してあげられることを
真剣に考えなくてはいけない、親である自分が考えなくては、誰が考えてくれるのか?と思った。

5.持続的なプログラムとしての有効性
【1】メリット
①参加する立場
・心身の健康を取り戻す
・異文化体験(学校生活、生活スタイル、食事など)
・帰国後の価値観の拡がり

②受け入れる立場
・教えることによる、無意識の意識化
・異文化体験

6.このプログラムをさらに改善するとしたら
・ミッションの明確化
・タイ語のレッスン
・大人用プログラムの開発 (ヨガ、クッキングに加えて瞑想、教育手法についての話など)
・共同アクティビティの実施 (親子交流、)
・通訳スタッフの確保
・ステイ先での意思疎通
・良心的参加費設定

7.最後に
このプロジェクトに参加できたことはとても有意義だった。
何より、見えない放射能の影響から、数日でも避難できたことは、子ども、特に次男の体力の回復に大きな影響をもたらした、と確信している。
それは、帰国後の検診結果にも表れており、高値で推移していた尿タンパクが平常値に下がったことは何よりの証拠であると考える。
それだけでもありがたいが更に、全く違った環境で過ごすことができたことによって、日本での生活をより高いポイントから俯瞰し、無意識で行っていることを意識化することができ、当然と思っていた公教育への疑問を呼び起こし、改善への道を模索するなど、私自身の生活にも小さな変化が生まれたと感じている。
どの場所でも温かく迎えてくれた、学校関係者の皆様、ホストファミリーのオンさん、コウさんご家族、コーディネータの高木さん、学校内をずっと付き添ってくださっていたイイムラ先生には特に感謝しています。本当にありがとうございました。

以 上







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